人手不足が続くなかで、最近増えているのが40〜50代の女性からのご相談です。
この世代の方は、専門職・中堅・管理職として現場を支える役目を担っていることも多いと思います。
辞めるか、続けるか?就業継続は、事業の継続の話にもつながってくるのではないでしょうか。
この記事では、公的な調査をもとに、女性の健康課題と離職の関係を整理してみます。
社会全体で見ると、損失は年間約3.4兆円
経済産業省は、女性特有の健康課題による経済損失を年間約3.4兆円と試算しています(2024年2月)。
内訳は、月経随伴症が約0.6兆円、更年期症状が約1.9兆円、婦人科がんが約0.6兆円、不妊治療が約0.3兆円です。
更年期症状だけで約1.9兆円と、最も大きな割合を占めます。
その内訳を見ると、欠勤が約1,600億円、パフォーマンス低下が約5,600億円、離職が約1兆円、離職に伴う追加採用が約1,500億円です。
休むことよりも、働きながらの不調と離職が大きいのが特徴です。
あくまで、これは民間の調査会社が既存の調査をもとに行った「試算」で、社会全体の数字になります。(個々の会社の損失ではありません)
実際に、働き方や役職が変わった人たち
NHKや労働政策研究・研修機構などが2021年に行った調査です。(更年期症状を経験した40〜59歳の有業者が対象)
症状を理由に、非正規化、降格・昇進辞退、労働時間・業務量の減少、退職のいずれかを経験した女性が15.3%でした。そのうち退職は9.4%です。
「全員が不調」ではない。だから見えにくい
念のため、誤解のないように書いておきます。
内閣府経済社会総合研究所の研究(2025年6月、45〜56歳の働く女性2,731人を分析)では、症状が中等症〜重症の人は40.0%でした。
そう、約6割はそこまで重くないということです。
また、薬などを使いながら働いている人が19.4%いました。
さらに、パーソル総合研究所の調査では、治療が必要なレベルでも、女性の4割強が症状を自覚していないという結果が出ています。
つまり、本人にも会社にも見えにくく、人によって大きく違います。
属性だけで一括りにはできないのです。
会社側で見えにくいのは、「手前」の段階
45〜54歳の女性の就業率は80%を超え、この世代の就業者数は過去最多水準です。
この世代は、管理職や中堅が集中する世代でもあります。
経営者の目には、ある日突然の退職や昇進辞退として映ります。
でも、実はその手前に、パフォーマンスの低下、時短勤務、相談できないなどの状態があります。
相談の窓口や、上司の対応、業務の引継ぎの仕組みが整っていないと、その「手前」は会社に見えないままになっているのです。
例えば、こういった事例がありました。
専門職として10年以上働いたAさんは、体調不良の状態が続き、昇進の打診を断りました。
ご本人は相当悩んでいました。本当は望んでいたものの、今の調子ではしんどいかも…
会社は、個人の事情から時期を見送ったと受け取っていましたが、半年後に退職の連絡を受けました。予想もしていなかったことで、周囲は驚いたそうです。
そして、後任が決まるまでには、さらに数か月かかりました。
自社の「ポジション」で考えてみる
個人ではなく、ポジションで見ると整理しやすくなります。
- 辞めたら業務が止まるポジションは、いくつありますか。
- そのポジションの後任や、代わりに動ける人はいますか。
- 引継ぎには、何か月かかりますか。
- 管理職は、体調や両立の相談を受けた時の対応を知っていますか。
いかがでしょうか?
数字が出てこなければ、それ自体が見えていないところかもしれません。
まとめ
- 女性の健康課題による損失は、社会全体で年間約3.4兆円と試算され、更年期症状が最大です。
- 損失の中心は、欠勤よりも、働きながらの不調と離職です。
- 個人差が大きく、本人も気づかないことがあるため、会社の側からは見えにくい。
- 個人ではなく、ポジションと仕組みで考えることが、第一歩になります。
次の記事では、女性活躍推進法の改正など、企業を取り巻く2026年・制度の動きを整理します。

