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ホワイトマーク(安全衛生優良企業公表制度)をご存じですか?
以前、中小企業のPRに役立つ認定制度活用ガイド
に記載しましたが、実は私も詳しくありません。
そこで、もっと調べておこうと思ったのが今日の記事のきっかけです。
一言で言うと、「安全衛生優良企業公表制度」は、みなさまの会社が「社員を大切にしている」ことを対外的に証明するための認定制度だということ。
ただ、実際にこの制度で認定されているのは、2025年11月付けで30社ほどです。
狭き門なのか、あまりまだ知られていないからなのでしょうか?
このあたりも見ていきたいと思います。
「難しそう」「大企業向けではないか」と感じているかもしれませんが、ご安心ください。
なるべく分かりやすく、その概要とメリットや「やってみたい」と思える最初のヒントを共有しますね。
安全衛生優良企業公表制度とは?
この制度は、厚生労働省が平成27年6月に創設したものです。
「社員の安全や健康を守る対策に積極的に取り組み、高い水準を維持・改善している企業」
を国が正式に認定し、その企業名を公表する仕組みです。
労働災害の防止や社員の健康確保への積極的な取り組みは、働く人やその家族にとって非常に大切ですが、これまで積極的に取り組む企業の認知度が高いとは言えませんでした。
そこで国は、こうした優良な取り組みを社会に広く認知してもらい、より多くの企業に安全衛生対策を促進してもらうために、この制度を作りました。
この認定は業種を問わず、労働者を雇用するすべての企業・法人が対象となります。
認定の単位は、企業全体(法人単位)です。
働く人の安全と健康は、企業の業績そのもの
認定を受ける最大のメリットは、「社員の安全と健康を大切にする会社」であることを社会に広くPRできる点にあります。
認定されると、名刺や商品、広告などに専用の認定マーク(シンボルマーク)を使用できるほか、厚生労働省のホームページで企業名が公表されます。
これにより、以下のような具体的な効果が期待できます。
1. 採用活動での優位性(求職者へのPR)
若手や優秀な人材にとって「安全・健康に長く働けそう」という安心感を与え、人材獲得数の向上につながります。
2. 企業イメージの向上
取引先や消費者に対して「社員を大切にする優良企業」であることをアピールできます。
3. 生産性の向上と定着率の改善
安全・健康が確保された職場で働くことで、社員の働く意欲が高まり、生産性の向上や離職率の低下につながります。
認定を受けるための3つのステップ
安全衛生優良企業として認定されるには、主に三段階の基準をクリアする必要があります。
1.優良企業としての「土台」が整っているか(必要項目・状況確認)
ここでは、企業が基本的なコンプライアンスや安全衛生の水準を満たしているかを確認します。すべての項目を満たすことが必須です。
特に重要になるのは、過去3年間で重大な労働安全衛生法関連の法違反がないことや、長時間の時間外労働が常態化していないことです。
具体的には、直近の事業年度において
・残業と休日労働の合計時間が毎月45時間未満であること
・平均した残業時間が月60時間以上の社員がいないことなどが求められます。
また、労働災害の発生率が同業種の平均を下回っている必要もあります。
2.安全衛生の「仕組み」が機能しているか(必要項目・取組確認)
ここでは、安全と健康を守るための組織体制や方針が、企業全体で整備されているかを確認します。これもすべての項目を満たすことが必須です。
具体的には、企業のトップが安全衛生に関する方針を明確に示し、それが従業員に周知されていることが必要です。
また、安全衛生に関する計画を策定する際に、労働者の代表者の意見を反映させる仕組みがあること。
そして、トップ(幹部)に対して労働災害や健康状況の報告が定期的になされていることなどが含まれます。
3.安全衛生への「積極的な活動」を評価する(評価項目・加点対象)
ここでは、企業が法律で求められている最低限の基準を超えて、自主的に行っている先進的な取り組みを評価し、点数化されます。
この段階では
・健康管理(計画的な健康増進、医療保険者との連携、疾病治療との両立支援など)
・メンタルヘルス対策(計画策定、ストレスチェックの結果活用、相談窓口の周知など
・過重労働防止対策(有給休暇取得促進ルール、長時間労働者への面接指導の工夫など)
・特定業種における安全でリスクの少ない職場環境の整備(リスクアセスメントの実施やKY活動=危険予知活動など)
の4つの分野で評価されます。
認定を受けるには、この評価項目(STEP 3)の合計点で、各分野の総計の6割以上。
加えて、全評価項目の総合点で8割以上の点数を取得する必要があります。
これは、基本体制(1, 2)をクリアした上で、積極的に健康と安全への投資や活動をしている企業が優遇される構造になっています。
認定数が少ない理由
1. 狭き門=求められる高い基準(厳格さ)
安全衛生優良企業として認定されるためには、法令遵守の基礎だけでなく、安全衛生水準を積極的に維持・改善している取り組みと実績の両方が厳しく評価されるようです。
2. 制度の認知度
平成27年6月に創設された比較的新しい制度です。
その年数を考慮すると、健康経営優良法人認定制度(経済産業省が主導)など他の評価制度と比べ、まだ中小企業の間で取り組みが広く浸透していない段階と考えられます。
💡3つのヒント
この制度を目指す上で、いきなり完璧を目指す必要はありません。
まずは、自社の「働く人の安全と健康こそ企業の業績」につながるという考え方(健康経営の考え方とも通じます)を共有し、土台を固めることが重要になります。
1.「必要項目」の基礎固めが最優先
認定以前に、過去3年間の重大な法令違反や、過重労働(残業月80時間超の連続など)の状況がないかを確認し、もし問題があれば是正を完了させましょう。
優良企業認定は、「法令遵守」と「健康確保の最低ライン」をクリアしていることが大前提です。
2.経営トップの「健康宣言」を文書化し、社内共有
企業のトップが従業員の安全と健康を重視する方針を正式な文書にし、メールや社内掲示板で広く周知するだけで、2の(安全衛生の「仕組み」が機能しているか)の重要な項目を満たせます。
これにより、全社的な安全衛生の目的が明確になります。
3.今ある健康データを活用する
健康診断やストレスチェックの結果を単に集計するだけでなく、そのデータを基に、翌年度の健康増進やメンタルヘルス対策の計画に反映させましょう。
シンプルなものでも、計画(P)→実施(D)→評価(C)→改善(A)のサイクルを回すことが、 評価につながります。
まずは、自社の現状を把握し、できるところから少しずつ取り組みを「見える化」することから始めてみるのはいかがでしょうか。
