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近年、「男性の育児休業(男性育休)」を取得される方が増えていますね。
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設など国からも制度の後押しがあります。
「若年層における育児休業等取得に対する意識調査」(2024年7月31日 厚生労働省)
調査結果では、若年層の育休制度の認知度は「知っている」が92.4%、「取得意向」が87.7%と、ともに9割近い結果。
また、配偶者に育休を取得してほしい意向も88.6%と、若年層の育休を取得したい意向の強さが明らかになりました。
育児介護休業法・男性育休は、企業が若手の優秀な人材を確保し、定着させるための重要な戦略の一つとなるのではないでしょうか。
特に人手不足が深刻な中小企業にとって、社員が家庭と仕事のバランスを取りやすい環境を整えることは、企業の成長や満足度につながります。
男性の育児休業取得率は大幅に上昇し、2024年度の調査では40.5%と初めて4割を超えました。
これは政府の目標を前倒しで達成した成果ですが、取得期間が「2週間未満」で半数以上を占めるなど、「実効性のある育児参加」にはまだ課題が残っています。
今回は、男性社員が安心して育児に参加できる環境を整えるため、核となる二つの制度。
・通常の育児休業
・産後パパ育休
加えて、2025年4月に施行された最も大きな金銭的支援の改革について、分かりやすく解説していきます。
知っておきたい男性育休の「二本柱」
男性が利用できる育休制度には、「通常の育児休業」と、2022年10月に導入された「産後パパ育休」の二つがあります。
1. 産後パパ育休(出生時育児休業)— 出産直後の集中サポート
産後パパ育休は、母親の身体的・精神的負担が大きい出産直後の時期を集中してサポートするために作られた制度です。
| 項目 | 制度の概要 |
| 取得期間 | 子の出生後8週間以内(56日間)。 |
| 休業可能日数 | 最大4週間(28日間)が上限です。 28日間には土日祝日も含まれます。 |
| 分割取得 | 期間中に2回までに分けて取得できます。 |
| 申出期限 | 原則として休業開始予定日の2週間前までに会社に申し出る必要があります。 |
| 休業中の就労 | 労使協定(会社と社員の代表者との書面による協定)がある場合、社員が合意した範囲で、例外的に働くこと(最大10日または80時間など)が可能です。 |
2. 通常の育児休業 — 長期的な両立を目指す
通常の育児休業は、子が1歳になるまで(原則)取得できる制度です。
| 項目 | 制度の概要 |
| 取得期間 | 原則として子が1歳になるまでです。 |
| 分割取得 | 2回まで分割して取得できます。 |
| 延長 | 保育園に入所できないなどの特別な事情がある場合は、子が1歳6か月、最長で2歳になるまで延長可能です。 |
| パパ・ママ育休プラス | 夫婦で育児休業を取得する場合、子が1歳2か月になるまで休業期間を延長できます。 |
| 休業中の就労 | 産後パパ育休とは異なり、原則として働くことはできません。 |
決定的な後押し!2025年4月からの給付金大改革
男性育休の取得をためらう最大の理由の一つが「休業中の収入の心配」でした。
しかし、2025年4月1日から施行された給付金制度の改正により、この懸念は大きく解消されます。
【重要】実質「手取り10割相当」の支給へ
2025年4月より、出生後の一定期間に両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、男性社員が取得した最大28日間について、支給される給付金が大幅に引き上げられました。
1. 従来の給付金(出生時育児休業給付金)
休業開始前の賃金の67%が支給されます。
2. 新設された支援給付金(出生後休業支援給付金)
上記に13%が上乗せされます。
3. 合計支給率: 80%(67% + 13%)となります。
さらに、育児休業期間中は、要件を満たせば社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が労使双方ともに免除されます。
この非課税の給付金(80%)と社会保険料免除を合わせると、休業前の手取り賃金とほぼ同等(手取り10割相当)の経済的なサポートが得られることになります。
これは、男性社員が経済的な不安なく、出産直後の最も大変な時期に家庭をサポートできることを意味します。
| 給付の種類 | 対象期間 | 給付率(賃金比率) | 社会保険料 | 実質的な手取り |
| 出生後休業支援給付金 | 出生後8週間以内の最大28日間 | 合計80% (67% + 13%) | 労使ともに免除 | 手取り10割相当 |
| 通常の育児休業給付金 | 上記以外の期間(最初の180日) | 67% | 労使ともに免除 | 手取り約8割相当 |
💡3つのヒント(義務と体制整備)
制度が整っていても、「職場の雰囲気が悪く取得しづらい」「手続きが複雑で面倒」といった状況では、制度は形骸化してしまいます。
中小企業が、社員に「この会社なら育休を取りたい」と思ってもらうために必要な対応を解説します。
1. 就業規則と労使協定の再確認・整備
就業規則や社内規定を、最新の法令に合わせて見直す必要があります。
• 入社間もない社員の除外撤廃 (2025年4月施行)
子の看護等休暇や介護休暇について、これまで労使協定で「勤続6か月未満の社員」を対象から外せましたが、この除外規定が撤廃されました。
入社して間もない社員でも、これらの休暇を取得できる体制を整えるため、就業規則や労使協定を見直す必要があります。
• 休業中の就労規定の明確化
産後パパ育休期間中に社員が希望に応じて部分的に就業することを認める場合、労使協定の締結と、就業規則への明記が必須です。
就業可能な日数(最大10日/80時間)や手続きを明確に定めます。
2. 取得しやすい雰囲気づくりとハラスメント防止
会社は、育児休業の申出や取得を理由に、解雇や降格、ボーナスの減額といった不利益な取り扱いをすることを法律で禁じられています。
また、上司や同僚からのハラスメント(「迷惑だ」「自分なら取らない」といった抑制的な言動)を防止するための措置を講じることも義務付けられています。
• 具体的な対応例を挙げてみますね。
* 管理職向けの研修を実施し、制度の重要性や部下からの相談に対する適切な対応方法を周知徹底する。
*育休取得に関する相談窓口を設置し、社員が安心して相談できる体制を整える。
*育休を取得した社員の成功事例を社内ポータルなどで積極的に共有し、制度を使いやすい空気を醸成する。
3. 制度の個別周知と給付金手続きのサポート
制度が複雑な場合、社員が利用を諦めてしまうことがあります。
• 給付金の周知徹底
2025年4月からの「手取り10割相当」というメリットを、妊娠・出産を申し出た男性社員に対して、人事担当者が書面や面談(オンライン面談も可)で個別に分かりやすく伝えることが非常に重要です。
• 手続きの代行
育児休業給付金や出生後休業支援給付金の申請手続きは、原則として事業主が行います。
社員の申請書類(賃金台帳、出勤簿、母子手帳の写しなど)を揃え、事業所を管轄するハローワークに提出する必要があります。
取得率向上を「会社の強み」に変えるためのステップ
男性育休の推進は、一時的な負担ではなく、「優秀な人材を育てる」という長期的な投資になります。
【企業側のメリット】
社員が安心して育休を取得し、キャリアを継続できる環境は、以下のようなメリットを会社にもたらします。
• 優秀な人材の獲得
特に若い世代の男性は共働きや育休取得への意向が急増しており、柔軟な制度は就職・定着の大きな動機付けとなります。
• 生産性の向上
育休取得者の業務をチームで分担することで、業務の属人化を防ぎ、効率化(業務の見直し、デジタルツールの活用など)が促進されます。
【活用したい国の支援】
制度導入や運用には費用や手間がかかりますが、中小企業が利用できる公的な支援策が用意されています。
• 両立支援等助成金(出生時両立支援コースなど)
男性社員の育休取得を促進するための職場環境整備を行った事業主に対し、助成金が支給されます。
• 無料の専門家相談
就業規則の整備や、休業取得・復職時のサポート、業務代替などでお悩みの企業は、社会保険労務士などの専門家から無料でアドバイスを受けることができる支援事業(中小企業育児・介護休業等推進支援事業など)があります。
まとめ
男性育休の推進は、企業にとって、社員の人生の節目において「社員とその家族に寄り添う信頼できるパートナー」としての役割を果たすことを意味します。
2025年4月の給付金拡充は、男性が家庭に参加する大きな経済的なハードルを取り除きました。
これらをきっかけに、制度の運用を「義務」ではなく「会社の魅力を高めるチャンス」と捉え、社員が誇りを持って働ける職場づくりを進めていけたら良いですね。
詳細、導入する際は厚生労働省のHPをご確認ください。

