小学生の子ども達は言語をどう捉えていますか

子育て・教育

英語教師歴40年の小河先生に、5回に分けてお話をうかがっています。

①先生の英語学習について
②お子さんのおうち英語
③英語教員歴40年で分かってきたこと
④小学校の授業を見学して
⑤小学生の保護者に向けて英語のアドバイス

今回は④小学校の授業を見学してになります。 

授業を見学されていかがでしたか

埼玉県立高等学校の教員を定年退職してから、大学の講師をしています。
埼玉大学教育学部では「初等英語科指導法」という科目を3年間担当し、12クール1,000人の学生に、小学校で英語を教える時に気をつけてほしい英語指導の基本をお話しました。

その経験から、小学校の英語授業研究会に指導助言者としてお招きいただく機会も増えてきました。
小学校の英語の授業は、私が埼玉県立南稜高校の英語科教員として地域連携のアドバイザーとして入っていた20年前と比べると、ずいぶんと進化していました。

電子黒板などの教材や教具が進化していて、ネイティブスピーカーの講師の方も同席しているので、担任の先生がものすごく英語が得意でなくても、楽しく効果的な授業ができていると感じました。

児童たちも繰り返しの中で、いろいろな表現を学んでいる感じでした。
何よりも、「面白そうだ」と思う事への反応がイキイキと表現されるのが小学生の特徴だと思いました。声もよく出ていました。

高学年になると少し恥ずかしさも出ているようでしたが、「家族の好きなことについて、お互いに質問してこの表を埋めよう」など、英語によるやりとりの目的と目標が示されると、活動に積極的になれる様子でした。

先生方はどのように工夫されているのでしょうか

たとえば、HeとSheの区別が瞬間的にできるように、写真やイラストを次々に見せて、児童の反応を引き出す工夫が印象的でした。
まず全体で練習して慣れてきてから個別の活動に入るなど、指導の手順も確立されている様子でした。

ネイティブスピーカーの講師の方も、表情豊かにユーモアを交えて、児童のやる気を引き出していました。
日本人の先生も、自分でも英語を使いながら児童の活動をリードしていました。

授業後の検討会では、家族の話がつらい児童への対処など話し合われていて、小学校の現場での配慮事項の多さに敬服しました。

小学生の子ども達は言語をどう捉えていますか

コミュニケーションのツールとしてとらえていると思いました。
なかなか英語がでてこない友人を助けたりもしていました。
English Leaderという役割で教室の前で授業前後の挨拶をリードする子どもたちがとても元気で好感がもてました。

一方で、活動の目的や内容への理解度には個人差があるので、一定のパターンでの繰り返しがあることで、少しずつ理解が深まる児童もついていけるのではないかと思いました。
見学した授業にはそのような方針がとられていました。

イングリッシュディバイド(英語を学ぶチャンス次第で人生の質が変わってしまうこと)をどう思われますか

アジアや南米、そしてヨーロッパでも目立ってきている現象ですね。
就職に有利だから英語を学ぶ。
むしろ英語ができないと希望の職業につけないかもしれない。
そういう流れは徐々に日本にも迫ってきています。

私はこれを、チャンスに変えられると思っています。
少数の人に英語を任せるのではなく、英語で会話をすること・用件を伝えることが、もっと当たり前になり「発音が良すぎるとからかわれるからわざと下手に発音する」などという残念な現象が少なくなるといいな、と思います。

現場の先生方へのメッセージがありましたら教えてください

20年前の状況と比べると、小学校の先生方が英語の授業に慣れ、ご自身の英語力も向上されているのが印象的でした。
ALTの先生方との雑談も気楽になさっていました。

これから小学校の現場に入る若い先生は、大学で英語の指導法を学んでいたり、専科の先生(音楽や美術に専門の先生がいるように英語にも専門の先生が配置されること)も増えていくと思われます。
まだまだこれからの可能性がありますので、今までの積み上げをつなげていけたらと思います。

実際、今の大学生は小学校から学校で英語に触れている学生たちで、お互いに英語で意見交換をするのに対する抵抗感が減っているのを実感します。
長い間英語の教員をしてきて、コミュニケーション型の英語教育をめざしてきて、やっとこの日が来たかと感慨深く感じています。