英語教師歴40年の小河先生にインタビューさせていただきました。
12/12に出版される書籍は、ズバリ「おうち英語」
①先生の英語学習について
②お子さんのおうち英語
③英語教員歴40年で分かってきたこと
④小学校の授業を見学して
⑤小学生の保護者に向けて英語のアドバイス
【小河園子先生のプロフィール】
40年以上の経験を持つ英語教師。埼玉県立浦和高等学校などで教え、海外で活躍する人材を多数輩出。定年後も大学で非常勤講師を務め、小中高の英語の教員養成にあたっている。地域の国際交流活動にも積極的に参加。英検1級、ケンブリッジ英検CPE(C2)など高度な英語資格を持つ
5回に分けていますが、③3回目の今回は生徒さんの英語についてです。
生徒さんの英語力はいかがですか
今、お茶の水女子大学附属高等学校の第3学年で担当させていただいている生徒さんの英語力は本当に高いです。
6月に全員受験したケンブリッジ英検で97%がB1(英検2級相当)、うち33%がB2(英検準1級相当)の英語力をもっています。
自分も背伸びしてC2(英検1級プラスアルファのレベル)を取得しておいて良かったと思います。
4技能(聞く、話す、読む、書く)をバランスよく、5技能目としてやりとり(インタラクション)を加えて学ぶ方向に、文部科学省が提示する学習指導要領が変わって、教科書も変わりました。
その新しい教え方・学び方の最前線で学年進行してきた生徒達です。
大学進学のための共通テストも変わってきていますから、どのように反映されるか緊張感がありますね。
幼い頃から英語に親しんでいるご家庭もありますか
発音や発話の流暢さから、たぶん「おうち英語」ないしは海外在住の環境で英語を時間をかけて自然に身に付けたのだろうな、と推測されるケースはあります。
一方で、中学校の頃から自分で英語らしい発音にこだわりはじめて、YouTubeなどで一生懸命練習したという生徒もいます。
思わず「海外経験長かったのですか?」と聞いてしまったら、「いえ、自学なんです。」と教えてくれました。
ご家庭のサポートがあるからこそとも思います。
もう一つ、幼い頃から英語に親しんだのだろうと感じられる指標は、意外なことに、100語以上の長めの文章を書いてもらったときです。
インプット多め、言い換えると多読多聴的な学習をしてきた方は、文のつながりが滑らかだな、と感じます。
正確さと流暢さの両立は長いスパンで自己分析しながら足りない部分を補うと良いと思います。

海外の大学に進学された生徒さんは元から英語ができましたか
これは、埼玉県立南稜高校や浦和高校での例になりますけれど、2つのパターンがあります。
英語ができるから留学をしたい、というケースと、海外で学びたい特定の分野があるから留学したいというケースですね。
私が接した事例では、後者の方が進路や就職の際にブレたりせずに、目に見える成果を出されています。
前者の方の場合は、現地への溶け込みが早い分、居場所探しに時間がかかる場合がありますが、しあわせはそれぞれなので、それぞれに海外生活の意味はあると思います。
今後は円安の傾向から、学費の負担が大きくなりますから奨学金取得が課題となり、留学に行く前からの目的の明確化は今まで以上に求められることになりそうです。
苦手な生徒さんにはどう指導されていますか
とにかく動機づけと達成感が大事だと思っています。
たとえば「○○状況の人にアドバイスをしよう」というような日常の経験と英語が結びつく場面を設定してあげると、英語は多少苦手だが、それ以外の強化や社会経験が豊かな生徒は”Don’t be afraid of making mistakes.”などと、実感を伴った英語の文を作ることができます。
そういう時に思いっきりほめてあげると少しずつ苦手意識が軽減されるようです。
また、グループ学習もある程度有効です。
ペアやグループでディスカッションをすると、たいていの場合、英語に自信がある生徒がまず話し始めてリードをします。
やや苦手な生徒も、聞きながら表現の仕方を参考にすることができます。
特に、グラフなどの資料を見て説明する英語をあらかじめ用意する、などの要素を入れると、英語の流暢さののみならず、総合的な思考力や表現力も必要となるため、少々たどたどしくても立派にディスカッションに貢献できる人もいるのです。
教員の仕事で一番大切なのは、そのようにお互いを尊重しながら学び合う雰囲気を作ることだと思っています。
自分もまた学んでいるという自覚、そして、わからない時には平気で生徒の前でも調べるようになってから、自分の授業は少しまともになったかな、と長い教員人生を振り返ってみて思います。
