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勤務間インターバル制度
名前は聞くけれど、「それってどんな制度?」「うちみたいな中小企業には難しいよ…」と感じている経営者や人事担当の方は多いのではないでしょうか?
この制度は、「翌日の仕事までに、必ず一定の休息時間(インターバル)を確保する」というシンプルな制度です。
「労働時間等設定改善法」(労働時間等の改善に関する特別措置法)が改正され、2019年4月1日より勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となりました。
10月に発表された厚生労働省の調査を分析したこのレポートには、すでに導入された企業の声と成果が表れています。
義務化の予定はまだありませんが、まずは導入のヒントを探ってみましょう。
導入の目的は「社員の元気」と「眠りの確保」
導入済みの企業が最も重視している導入理由は、シンプルで切実なものでした 。
第1位:従業員の健康維持・増進のため (87.8%)
第2位:長時間労働を抑制するため (75.3%)
第3位:従業員が睡眠時間を確保できるようにするため (73.5%)
つまり、この制度の目的は、社員の心と身体を壊さない=適切な労働時間と休息が必要。
特に注目すべきは睡眠時間です 。
インターバルを確保することは、社員の睡眠時間の確保に効果があり、それが結果的に心身の健康や業務パフォーマンスの維持・向上に繋がると示唆されています 。
「パフォーマンスが上がるなら、うちも導入するかな」と希望が持てますね。
中小企業にとってさらに嬉しいデータもありました。
従業員規模が小さい企業では、導入効果として「離職率が減った」という回答も見られます 。
採用コストや教育コストを考えると、離職率の低下は経営に直結する大きなメリットです。
また、従業員が99人以下の規模の企業では、「助成金支給を受けられるため」という理由で導入した割合が他の規模よりも高い傾向にありました 。
中小企業は制度導入にあたって、こうした公的な支援を積極的に活用していきたいですね。
助成金はこちら
*働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
2025年度の締切は11月28日までになっています。
導入時の不安を乗り越える
導入を検討する際、多くの企業が抱える不安も共有されていました。
課題1:業務に支障のない方法で運用すること (39.4%)
課題2:労働者に制度の重要性を理解してもらうこと (41.2%)
「次の日の始業時間を遅らせたら、業務が回らなくなるのでは?」という不安は当然です。
この不安を解消し、インターバルを実効性あるものにするために、企業は具体的な運用方法で工夫していました 。
【インターバル確保のための具体的な運用例】
・勤務時間の後ろ倒し:遅くなった分、翌日の始業時刻と終業時刻を遅らせる 。
・「みなし労働時間」の適用:翌日の始業時刻を変えず、インターバル確保で生じた「遅刻時間」を働いたものとみなす 。
・残業禁止・翌日の始業時間前勤務禁止
特に、始業時刻を遅らせた分を「働いたものとみなす」
柔軟な運用は、社員の給与への影響を最小限に抑えつつ、休息を優先させるという会社側の意思を示すことになります。
また、インターバルを確保できなかった社員がいた場合、調査企業の半分弱が「特に代償措置を講じていない」と回答しています。
積極的に対応している企業では、「上司との面談機会を設定し、仕事の配分を見直している」という前向きな措置を取っています 。
制度を単なるルールで終わらせず、業務改善の機会に変えているのが特徴です。
質を高めるもう一歩の工夫
インターバルの時間を物理的に確保するだけでなく、その「質」を高めることが、社員の健康とパフォーマンスに重要であることも分かりました 。
睡眠時間を確保するには、インターバルの長さだけでなく、通勤時間や家事・育児・介護時間といった個人の事情が関わってきます 。
そして、特に私たちが意識した方が良いのは、勤務時間外での仕事から離れる時間の確保です 。
持ち帰りの残業や勤務時間外の仕事連絡は、せっかく確保した休息時間を奪い、睡眠の制約要因となってしまうのです 。
勤務間インターバル制度は、「○時間空ける」という物理的なルールだけではなく、「仕事を終えたら、翌日の始業までは仕事から完全に離れる」という職場全体の文化を作るためのきっかけだと捉えた方が良いですね。
具体的な効果
勤務間インターバル制度の導入企業では、「労働者の健康維持・増進」や「ワーク・ライフ・バランスの向上」といった具体的な効果が表れています 。
この制度は決して大企業のためだけのものではありません。
社員の健康を守ることは、会社への満足度に繋がります。
結果として離職率が下がり、企業イメージが向上する。
中小企業が持続的に成長するために欠かせない投資と捉えることができます 。
業務に支障が出る不安よりも、社員が元気に働き続けることのメリットに目を向けていきたいですね。
柔軟な運用方法や助成金を活用し、社員の健康を経営戦略の柱として位置づけることで、会社も変われることができます。
💡3つのヒント
・制度の導入は健康投資
長時間労働の抑制だけでなく、「社員の睡眠確保とパフォーマンス向上」を導入目的の第一に。
制度の重要性を社員に共有して、声を聞いてみることが第一歩です。
・柔軟な「みなし運用」を検討
インターバル確保で生じる翌日の遅刻時間について、「働いたものとみなす」などのみなし運用に
ついて、社員が給与面で不利益を被らないように配慮することが重要です。
実効性のある柔軟な労働時間管理を導入しましょう 。
・仕事から離れる時間をルール化
勤務時間外の仕事に関するメールやチャットの連絡を緊急時以外は原則禁止するなど、休息時間中 に仕事から完全に切り離されるよう周知し、睡眠の質を守りましょう 。

