ブログをご覧いただきありがとうございます。
人的資本経営を現場につなげる視点で、中小企業の事例を一緒に見ていきたいと思います。
名づけて、うちでもマネできるヒントを探そうシリーズ。
今回、私たちがヒントを探るのは、東京都の中小企業支援事業の令和6年度(2024年度)の事例にもご紹介されている株式会社利根川産業さまです。
長時間労働と採用難からの脱却を目指して
利根川産業は、一般・産業廃棄物の収集運搬と、高度なリサイクルを二本柱とする、従業員数114名の企業です。
もともと社員の定着率は悪くなかったのですが、現場での作業が中心の労働集約型の業種。
長年の課題は、組織がフラットすぎることと若手採用の難しさでした。
以前は明確な階層型組織図がなく、リーダーの役割も曖昧でした。
結果として、仕事ができる社員に業務が集中してしまい、疲弊する状況が生まれていました。
また、2010年以降は新規採用が年々厳しくなり、高齢化が進む中で若手を確保することは喫緊の課題でした。
「人への投資」で組織に生命力を吹き込む
同社が最初に着手したのは、経営の土台を固めることでした。
1. 理念と組織の再定義
利根川取締役が中心となり、企業理念(ミッション・ビジョン・バリュー)を再定義し、会社が目指す方向性や社員一人ひとりの役割を明確に提示しました。
次に、横並びだった組織を階層化し、チームリーダーのポジションを明確に設定しました。
2. リーダー育成と信頼の構築
リーダー人材には外部研修への参加や、定期的なリーダーミーティングを通じて育成を図りました。
さらに、毎月1回、リーダーとメンバーとの1on1面談を実施しました。
この対話を通じて信頼関係が生まれ、仕事が円滑に進むようになり、リーダー自身も自分の部門だけでなく、全社的な課題に意識を向けるようになったそうです。
3. 若手を巻き込んだ採用戦略
採用難を乗り越えるために、若手のパート社員で構成される広報部を新設し、SNSを活用した情報発信を開始しました。
日頃からSNSを使い慣れている若い社員自身が発信することで、100万再生を超える「バズ動画」も生まれ、応募者の間口が全国に大きく広がりました。
その結果、2023年から若手人材が10人も採用されています。
4. 働きがいと健康の「見える化」
「業界一健康になれる会社」を掲げた健康経営に取り組み、2023年には健康経営優良法人にも認定されています。
また、社員の意識を把握するためエンゲージメントサーベイ調査を導入。
その結果、社員からは「業務のシステム化」と並んで「会社への信頼」が高い評価になっています。
利根川取締役は、これらの組織改善の施策は「魔法のツールはなく、優先度を決めてひとつひとつ地道に取り組んでいくしかない」と語られています。
しかし、効率化や組織改革といった一つ一つの取り組みが、採用時のアピールポイントになるなど、相互に関連して効果をもたらしていることを実感されています。
💡3つのヒント
1.経営者の言葉を発信
自社の企業理念を、全社員に向けて発信することが、すべての活動の土台になっています。
• 対話を習慣化
物理的な距離が近い中小企業の強みを活かし、1on1ミーティングで上司と部下が定期的にキャリアや成長について対話する場を設けています。
• 数値で測り、改善のPDCAを回す
エンゲージメントサーベイなどのツールを導入し、社員の働きがいや会社への信頼などの項目を可視化しています。計測することで課題が明確になり、何を改善すべきかの優先順位がつけやすくなり、継続的な組織改善(PDCA)につながります。
*詳しくはこちらの資料に記載されています。
株式会社利根川産業
HPはこちら→株式会社利根川産業さま
~これまでご紹介させていただいた企業さまです~
事例① 新たな事業機会にもつながった御津電子株式会社
事例② 株式会社八天堂の人を大切にする経営哲学
事例③ ユニークな人事評価制度の岩田商事株式会社
事例④ 働き方を変えて優秀な人材を呼び込む株式会社稲美乳販
事例⑤ 理念経営でAIに代替されない人間力を育むグローバルビジネスソリューション株式会社
事例⑥ 関わる人全員が幸せになる会社づくり島田電気製作所
事例⑦ 対話と公正さで人が辞めない会社に 株式会社福井製作所
事例⑧ 組織と個人の課題を調査で見える化した成果 株式会社ペンシル

