参考にできるヒントを探して~中小企業の人的資本経営の事例をご紹介①~新たな事業機会にもつながった御津電子

事例

ブログをご覧いただきありがとうございます。

「人的資本経営」と聞くと、「大企業の話でしょう」「うちみたいな中小企業には関係ない」と感じる方も多いと思います。
私も最初に言葉を聞いた頃はそう思っていました。

けれど最近、社労士として新たな分野を学び始めて気づいたのは
人的資本経営は、難しい理論ではなく「社員一人ひとりの力をどう活かすか」という実はとても身近な考え方だということ。

たとえば、人が辞めない会社にしたい、社員にやる気になってもらいたい。
それらはすべて「人を活かす経営」の一つだと思います。

規模の大小に関わらず、社員一人ひとりの能力と意欲が高まると、組織全体が強くなる。
そのヒントを探すために、これからいくつか事例をご紹介していきます。

名付けて「うちでもマネできるヒントを探そうシリーズ」第1弾
ご一緒に“最初の一歩”を見つけていきましょう。

はじめに、中小企業の経営者が直面する共通の課題を考えてみました。
いくつもあると思いますが、ここではまず2つ。
・人材の確保の難しさ
・社員一人ひとりの成長が会社の命運を左右する を挙げてみます。

今回一緒に学んでいく御津電子株式会社さまの事例は、中小企業だからこそ実践でき、大きな成果を生み出す人を活かす経営のヒントに満ちています。

御津電子は、人的資本経営を経営の柱と位置付けています。
「優れた戦略があっても、それを推進するのは『人』であり、優れた人材が育ち、安心できる環境が整ってこそ、企業は真に持続可能な成長を遂げられる」という強い信念をお持ちです。

人の可能性を信じる「家族第一主義」の哲学

御津電子の取り組みの根幹には、代表自身がリクルートでの経験を通じて確信した熱い信念があります。
それは、「人の可能性は無限大である」という考え方です。

この可能性を引き出すために、同社が掲げているのが「仕事第一ではなく、家族第一」という基本的な哲学です。
経営者は、人は仕事だけでなく、家族や私生活が充実しているからこそ、仕事において最大限の力を発揮できると考えています。
だからこそ、社員が安心して仕事と家庭を両立できるよう、ワークライフバランスの整備に力を注いでいます。

特に注目したいのは、同社が男性社員の育児休業取得率100%を実現していること。
これは制度導入ではなく、「従業員は家族に支えられている。その家族と上質な時間を過ごすことが、人生において最も重要だ」という経営者の価値観が社員に伝わり、安心感が醸成されている証拠だと言えます。
私たちも社員とその家族の幸せを最優先に考える姿勢から、社員の力を引き出す一歩を踏み出せそうですね。

現場の声を未来につなげる「KSKサイクル」

中小企業ならではの強みは、経営層と現場の距離が近いことです。
御津電子は、この強みを最大限に活かす「KSKサイクル(傾聴・支援・改善)」という仕組みを繰り返し実践しています。

このサイクルでは、経営陣や上司がまず社員の声をよく聞き、その後に必要な支援を行い、そして職場環境や制度の改善を図ります。

例えば、業務の進め方や職場の制度について社員から良いアイデアが出れば、経営陣がすぐに耳を傾け、即座に採用して仕組み化しています。
経営方針について現場から「自分の目標と紐づけて行動したい」といった前向きな発言が自然と上がってくるのも、この双方向の対話と迅速なフィードバックがあるからでしょう。

個人の「やってみたい」が新規事業を創出する

御津電子の人的資本経営がもたらした大きな成果は、社員の成長が会社の新しいビジョンと事業創出につながっている事例です。

同社の牛窓工場では、多忙な業務とご家庭の課題を抱える工場長(Aさん)に対し、会社が「KSKサイクル」に基づく人的・制度的なバックアップを徹底しました。
権限移譲やITツール導入で余裕を生み出し、Aさんが部下との面談(傾聴・支援)に専念できる環境を整えていきます。
その結果、工場全体の売上が伸び、人材の応募も飛躍的に増加するという具体的な成果に繋がりました。

そして、Aさん自身も仕事と家庭に向き合い、「障がい者と社会をつなぐ仕事がしたい」という自己実現のビジョンを導き出したのです。
経営陣はこの想いを尊重し、社内で検討を重ねた結果、障がい者の就労支援施設を立ち上げる新規事業プロジェクトが誕生しました。

社員一人ひとりの成長と「なりたい姿」を真剣に追いかけることが、本業の収益拡大だけでなく、会社の未来を支える新しい柱(多角化経営)を創り出されています。

御津電子の事例は、大企業のようなリソースがなくても、経営者の揺るぎない「人への信念」と「柔軟な仕組み」があれば、企業が持続的に成長できることを証明されています。

💡3つのヒント

対話の習慣化
社員の声に耳を傾け、「改善」につなげる「KSKサイクル(傾聴・支援・改善)」
現場の小さな不満を大きな課題になる前に解決し、心理的な壁を取り除いています。

安心の提供
社員が安心して家庭生活と両立できる環境を整えることが、結果的に高いパフォーマンスに繋がるっています。

自己実現の活用
社員一人ひとりのキャリア面談で「将来やってみたいこと」を掘り下げ、その個人のビジョンを、会社の新規事業のアイデアとして取り上げる仕組みを作っています。
社員の熱意と企業の成長が繋がっている事例ですね。

HPはこちら → 御津電子株式会社さま
ブログの中でもさまざまな取組が記載されていますので、参考にさせていただきました。
*代表取締役の一見さまは、9月に幕張メッセで「人材こそ最大の資本!中小製造業の人的資本経営の成功事例」の講演会もされています。