誠実な変態!?を育成するコクヨの人的資本経営

事例


ブログをご覧いただきありがとうございます。

コクヨ株式会社さまの人的資本経営を拝聴する機会がありました。
長期ビジョンの達成に向けて「一人ひとりに光を当てた育成」と「挑戦しやすい組織風土」が鍵。
課題解決に誠実に向き合い、創造的に行動する人材=誠実な変態 が掲げられています。

個人的には、社内複業 20%チャレンジの取組と、誠実な変態がパワーワード過ぎて印象に残っております。

人的資本経営の考え方:挑戦を促す仕組み

コクヨは、事業を通じて社会課題の解決に貢献し、長期ビジョンを実現するために、「人」を創造の源泉と捉えています。
一人ひとりの創造性を発揮してもらい、社会課題や多様な人々の課題解決に繋げていくことを目指しています。
そのためのキーワードは以下の3つです。

  • 共感共創: 一人ではなし得ない創造性を、ともに作り上げていくことで実現します。
  • 体験デザイン: 共感共創の場をデザインし、体験を通じて深く関わることを重視します。
  • 実験カルチャー: まずやってみるという考え方に基づき、新しいアイデアをチームや組織として育むことを大切にします。

これらの取り組みを通じ、課題解決に誠実に向き合い、創造的に行動する人材の育成と、多様な人材が挑戦しやすい組織風土の実現を目指しています。

組織風土改革へのアプローチ:ハードとソフトの連動

組織風土とは、習慣化された思考や行動様式、組織内の暗黙知などを指します。
この組織風土を改善するため、制度・環境・インフラを連動させたアプローチを推進しています。

  • 推進体制: ヒューマン&カルチャー本部が中心となり、HR(人事施策)、働き方総務(環境)、コーポレートコミュニケーション(組織を良くするアプローチ)の各機能が一体となって、環境・制度・仕組みをアップデートしています。
  • ハード面のアップデート(環境): 働く環境の更新として、センターオフィスの役割を再定義し、社外との交流や社員の家族との関わりを生む場づくりを行っています。
    • オフィスを街に開き、一般のお客様も入るショップやセミナースペースを設置。
    • 社会課題解決に向けたイベントを他社と共催。
    • 「オフィス内角度」として、夏休みなどに子供連れで出勤できるような取り組みにチャレンジ。

人材育成の柱:「コクヨアカデミア」の展開

人材マネジメントポリシーを定め、人材育成機関として「コクヨアカデミア」を約2年前に立ち上げ、運営しています。
これは、一人ひとりが自身の可能性を信じ、新たなチャレンジへ繋げる成長の源泉となる「リーダーシップ」や「クリエイティビティ」を磨く場です。

<コクヨアカデミアの主要カテゴリー>

  1. リーダーシップディベロップメント: 新しい未来を築き、周囲のメンバーを導く力を育む。
  2. クリエイティビティディベロップメント: 同質性を乗り越えていくクリエイティビティ(「誠実な変態」を生み出す)を育む。
  3. キャリア・オーナーシップディベロップメント: 人生やキャリアのオーナーは自分自身であるという「自律」を後押しする。
  4. ビジネススキル・ビジネスリテラシー: ビジネスのベースとなるスキルの強化と主体的学びを後押しする。
  5. 学び続ける組織(中心): 「わくわくする未来をコクヨらしくカタチにする」人材を、コクヨの連鎖でみんなで育てるという考え方。

<主なプログラム事例>

  • リード・ザ・コクヨ / リード・ザ・チェンジ: 上級層がリーダーシップを内省し、事業成長を構想する。
  • KOKUYO Career Dock: 若手社員と上司が対話を通じ「成長」と向き合うプログラム。
  • マーケティング大学・大学院: 新規事業の構想や戦略策定を通じ、経営層からのフィードバックも受けながらマーケティングスキルを習得する。
  • 学びDay / ヨコワクワークショップ / コクヨ・クリエイティブ・ハブ など。

組織活性化の象徴:社内複業 20%チャレンジ

「社内複業 20%チャレンジ」 は、社員の主体的なキャリア形成・能力向上と組織の活性化を後押しする取り組みです。

  • 概要: 業務時間の20%程度を活用し、他組織の業務に参加する社内複業型のチャレンジ。期間は3~12か月。
  • 目指す姿: 現状の成果を落とさずに「現業80+新テーマ20」の状態を目指す(「現業100+新テーマ20」ではない)。
  • 仕組み: 組織からの求人テーマに対し、やりたい社員が手を挙げて応募し、事務局と求人組織がマッチングを行う。
  • 目的:
    1. 自身のWILLを主体的に描き、その実現に向けた一歩を踏み出す。
    2. 新たな仕事の進め方や考え方を身につけ、自身の強みや成長テーマを具体化する。

立ち上げ期の課題と改善

チャレンジの立ち上げ期には、以下の課題が発生したことを共有されています。

  1. 望みすぎ→施策が人材・組織活性化や事業成長など、全てにおいて効果や期待を望みすぎた。
    • 改善: 「成長につながるか」を最優先とし、社員自身が「やりたい」と思えることが自律・成長の第一歩というコンセプトを明確化。
  2. 集まりすぎ→初回で求人テーマが想像以上に100件集まり、リソースの確保やテーマの精査に課題。
    • 改善: テーマを精査する観点を明確化。
  3. タスク多すぎ→事務局側の工数が170%となるほど過多に。

効果

これらの改善を経て、「20%チャレンジ」は組織に浸透しています。

  • 参加者の声: 参加者の90%以上が成長を実感し、自身の強みや課題を具体化する機会となっている。
  • エンゲージメント: エンゲージメントサーベイの「挑戦する風土」がポイントアップ。
  • 参加者の年代構成: 若手社員だけでなく、30代、40代、50代の社員にも挑戦したいという意識が浸透し、幅広い年代が参加している。

コクヨは、これらの「ハードもソフトも連動させたアプローチ」を通じて、長期ビジョン実現に向けた「挑戦しやすい風土」と「育成プログラム」を提供し続けています。