ブログをご覧いただきありがとうございます。
人的資本経営を現場につなげる視点で、中小企業の事例を一緒に見ていきたいと思います。
名づけて、うちでもマネできるヒントを探そうシリーズ。
今回、私たちがヒントを探るのは、中小企業庁の人的資本への投資と組織の柔軟性、外部人材の活用の事例として紹介されている株式会社三義漆器店さまです。
「従業員の結束力」を成長のエンジンに変え、コロナ禍の逆境を乗り越えた、福島県会津若松市の老舗漆器製造メーカー、株式会社三義漆器店(さんよししっきてん)さまの事例から、ヒントを見つけていきましょう。
従業員数50人の超えられない壁を破る
三義漆器店は1935年創業の老舗、会津漆器製品の製造・販売を一貫して手掛けています。
3代目社長の曽根佳弘氏は、長年、企業規模や従業員数50人の壁を超えられないという課題に直面していました。
この課題を乗り越えるため、曽根社長は経営仲間から学んだ経験を活かし、2014年(会社設立51期目)から毎年「経営方針書」を策定し、経営を進めることを決意します。
これは、社長が目指す将来ビジョンと経営理念を明確にし、社員に浸透させることで、従業員の成長と会社の成長を両立させるという、人的資本経営の本質的なアプローチでした。
社員が「自分ごと」にする文化
同社の成功の要因は、社員の自発性を引き出し、結束力を会社の強みに変えたことにあります。
2017年頃から組織化した「社内委員会」の活動はその象徴です。
美化、5S、社風、向上、親睦、広報という6つのテーマで構成されたこれらの委員会は、もともと「会社に花壇を作りたい」といった従業員有志の声や、「このカラーコピーは本当に必要なのか」という社員の疑問から始まりました。
コピー機の前に毎月の印刷枚数やコストの一覧が張り出されることで、社員が自主的に「コスト削減」を意識し、改善が進んだというエピソードです。
これは、本来は経営陣や管理部門が担うべきコスト意識や改善活動を、社員一人ひとりが「自分たちの会社」という当事者意識をもって行動した結果です。
この「仲間を認め合い信じ合う結束力」は、経営層と従業員が双方向のコミュニケーションを重視し、従業員の意見を取り入れた制度改善を継続したことで育まれました。
また、社内研修として「SanYoshi塾」を実施するなど、従業員の能力開発にも力を注いでいます。
逆境で見えた、強靭な組織の成果
こうした「人への投資」がもたらした成果は、数字に明確に表れています。
同社は、コロナ禍の影響を受けながらも、5期連続の増収増益を達成しました。
売上高と従業員数も、取り組み開始から約10年前と比較して倍増するなど、長年の壁を突破し成長を続けています。曽根社長は、この成長に「従業員の共感が大きく貢献している」と語っています。
三義漆器店さまの事例は、特別なITツールや資金がなくても、経営者が理念と対話にコミットし、社員を信頼して「自分たちの会社づくり」を任せること。
それが社員の意欲と自律性を引き出し、そのまま企業の競争力と成果につながることを示しています。
💡3つのヒント
• 経営者の理念を浸透させる
「経営方針書(ビジョン)」を策定し、社内報や朝礼などを通じて発信しています。
経営陣と従業員の距離が近い中小企業こそ、経営者の理念やビジョンがダイレクトに伝わりやすいという強みがあります。
• 社員の当事者意識を育む
業務改善や社風づくりなど、テーマを絞った社員参加型の会を立ち上げ、社員が「会社を良くしたい」というアイデアを自主的に実行する機会を作っています。
花壇作りやコスト削減のアイデアが生まれたように、社員に権限を委譲することで、組織に「結束力」が生まれます。
• 自発的な成長を促す環境整備
外部研修だけでなく、社内研修(SanYoshi塾など)を企画・実施し、体系的に能力開発を推進しています。
また、従業員の意見を取り入れた制度改善を継続するなど、双方向のコミュニケーションを大事にすることが、自発的な成長を促す環境整備の鍵となります。
*詳しくはこちらの資料に記載されています。
人的資本への投資と組織の柔軟性、外部人材の活用
HPはこちら→三義漆器店さま
~これまでご紹介させていただいた企業さまです~
事例① 新たな事業機会にもつながった御津電子株式会社
事例② 株式会社八天堂の人を大切にする経営哲学
事例③ ユニークな人事評価制度の岩田商事株式会社
事例④ 働き方を変えて優秀な人材を呼び込む株式会社稲美乳販
事例⑤ 理念経営でAIに代替されない人間力を育むグローバルビジネスソリューション株式会社
事例⑥ 関わる人全員が幸せになる会社づくり島田電気製作所
事例⑦ 対話と公正さで人が辞めない会社に 株式会社福井製作所
事例⑧ 組織と個人の課題を調査で見える化した成果 株式会社ペンシル
事例⑨ 働きやすい職場環境の実現を目指す 株式会社利根川産業

