ブログをご覧いただきありがとうございます。
人的資本経営を現場につなげる視点で、中小企業の事例を一緒に見ていきたいと思います。
名づけて、うちでもマネできるヒントを探そうシリーズ。
今回、私たちがヒントを探るのは、ワークエンゲージメント向上取組事例でご紹介されている株式会社ペンシルさまです。Webコンサルティング事業を展開されている会社です。
中小企業の経営者や人事担当者の多くが、「採用してもすぐ辞めてしまう」「人が育たない」といった悩みを抱えています。
特にITやコンサルティングといった、人の成長がそのまま企業の成長につながるサービス業では、優秀な人材の定着が企業の命運を分けます。
2つの調査で「働きがい」の源泉を見つける
以前、同社は会社の成長とともに業務量が増え、コンサルタント職を中心に長時間労働が常態化。離職者が増加するという危機に直面していました。
この危機を乗り越えるため、ペンシル社は「人を大切にする経営」へと舵を切り、働きがいを高める取り組みを2011年頃から開始しました。
そこで成果を上げたのが、組織と個人の「心の声」をデータで捉える2つのサーベイ(意識調査)の活用でした。
1. エンゲージメントサーベイ(組織の通知表)
・半期に一度実施されるこの調査は、各組織の「通知表」という位置づけです。
目的は、部署ごとに抱える課題を体系的に洗い出すことでした。
調査結果の分析と改善計画を現場の管理職が担う仕組みにして、計画の進捗を会議で管理され、次の調査時に達成度が評価されます。
・働きがい向上の施策は部署ごとに企画・実施していますが、必要に応じて社長が支援を行うほか、社内報を通じてマネージャー間で自分の部署の状況や取組の好事例を共有しあうなど、全社での支援も行われています。
現場主導で組織改善のPDCAサイクルを回すための強力なツールとなっています。
2. ウェルビーイングサーベイ(従業員の健康状態や幸福度、職場環境への意識などを数値化するための調査)
組織全体の傾向を把握するエンゲージメント調査とは別に、従業員を目的とした調査も月に一度実施しています。
この調査で問題が見つかった社員に対しては、ガイドラインに基づき、迅速に面談などの対応を行います。
これは社員のメンタルや健康状態といった見えにくい課題を早期にキャッチし、「会社は自分を気にかけてくれている」という安心感につながります。
調査の活用がもたらした成果
これらの取り組みはすぐに目に見える成果となったわけではなく、効果を実感し始めるまでに約2年半から3年を要したそうです。
それでも粘り強く取り組んだ結果、大きな変化が生まれました。
• エンゲージメントスコアの大幅改善 (*従業員が企業や仕事に対して抱く「愛着」や「貢献意欲」を数値化した指標)
半期ごとの偏差値が、取り組み前の40から67へと大きく改善しました。
• 収益性の維持:
長時間労働の是正(分業制の導入など)によって労働時間は削減されましたが、収益性は維持されています。
• 文化の醸成
社員が自発的に研修企画を始めたり、課題について自ら相談する従業員が増えたりするなど、ボトムアップの文化が根付いています。
ペンシル社の事例は、多額の費用をかけずにサーベイを活用することで、組織の課題を可視化。
現場主導で改善を重ねることで、離職の原因だった問題を解決しつつ、業績を維持・向上できることを教えてくれます。
特に、エンゲージメントスコアと社内報の閲覧数に相関が見られたことから、データとコミュニケーションが密接に結びついていることがわかります。
💡3つのヒント
1. 調査(サーベイ)の活用
目的と頻度を分けて2つの調査を実施し、課題を立体的に把握する仕組みを構築しています。
2. 結果の分析と改善を現場に委譲
調査結果を人事部門や経営層で抱え込まず、各部門のマネージャーに「通知表」として返し、課題分析と計画・実行を任せることで、現場の当事者意識とPDCAサイクルを促しています。
3. データの活用
*エンゲージメントスコアと社内報の閲覧数に相関があったように、サーベイ結果を社内報や対話の場で「コミュニケーションのきっかけ」として積極的に共有しました。
「どこに課題があるか」「なぜその施策が必要か」をオープンにすることで、組織と社員の信頼関係が強化されています。
*詳しくはこちらの資料に記載されています。
ワークエンゲージメント向上取組事例 株式会社ペンシル
HPはこちら→株式会社ペンシル
~これまでご紹介させていただいた企業さまです~
事例① 新たな事業機会にもつながった御津電子株式会社
事例② 株式会社八天堂の人を大切にする経営哲学
事例③ ユニークな人事評価制度の岩田商事株式会社
事例④ 働き方を変えて優秀な人材を呼び込む株式会社稲美乳販
事例⑤ 理念経営でAIに代替されない人間力を育むグローバルビジネスソリューション株式会社
事例⑥ 関わる人全員が幸せになる会社づくり島田電気製作所
事例⑦ 対話と公正さで人が辞めない会社に 株式会社福井製作所

