関わる人全員が幸せになる会社づくり 島田電気製作所 中小企業の人的資本経営の事例をご紹介⑥

事例

ブログをご覧いただきありがとうございます。

中小企業の「人的資本経営」の事例を一緒に見ていきたいと思います。
名付けて、うちでもマネできるヒントを探そうシリーズ。(もっと良いネーミング募集中)

今回注目するのは、東京都の中小企業支援事業の令和5年度(2023年度)の事例にも挙げられている株式会社島田電機製作所です。

島田電機製作所は1933年創業の老舗町工場で、エレベーターの押しボタンや表示器をオーダーメイドで製造している専門メーカーです。

この会社が「誰もが働きたくなる会社」になるために、古い常識をひっくり返すような改革を行いました。
見事に生まれ変わったという点が中小企業にとって大きな希望となると思います。

「働きたくない会社」からの脱却

かつての島田電機製作所は、働くルールや人事評価の基準が不透明な、いわゆる「旧態依然とした町工場」でした。
社長自身が21歳で入社したときに、「こんな会社で働きたくない」と感じたことが、改革の強い原動力になったそうです。

島田電機製作所の人的資本経営は、「社員の成長・働きがいを重視し、関わる人全員が幸せになる会社づくりを実現」することを目指しています。
その核にあるのは、「事業活動はファンづくりの一環」という考え方。

社員の思いが会社のブランドを作り、最終的に顧客のファンを生むためにも、まず「社員に愛される企業」になることを目標に掲げています。
この目標を実現するため、同社は「社員の個性を生かし、イキイキ ・ワクワク働く仕組み」を構築しています。

心理的・物理的な壁を壊すコミュニケーション

社員が常にお客様の声を直接聞く機会が少ない製造業の特性を乗り越え、風通しの良い組織を作るために、島田電機製作所はコミュニケーションの場に徹底的に投資しました。

1. 「ボタンちゃんカフェ&バー」の設置
社内に本格的なカフェ&バーを設置し、社員同士が仕事中にはできないラフな会話を楽しめるようにしました。
アルコールも常備されており、仕事終わりにお酒を飲みながら交流を深めたり、お客様を招待してカジュアルなコミュニケーションを図ったりしています。
これにより、社長と社員、そして社員同士の間の物理的・心理的な「壁」がなくなったと評価されています。

2. 島田塾による「人間力」の向上
社長自らが講師となり「島田塾」を立ち上げ、社員の成長を見守る仕組みを構築しました。
この塾では、技術的なスキルだけでなく、人間力に焦点を当てた考え方を社員に直接伝えています。
これは、若手が人間形成を学べる環境が不足しているという認識から、会社が責任を持って教育を担うという決意の表れです。

個性を尊重するユニークな人事施策

島田電機製作所は、社員が会社を「自分ごと」として捉え、自律的に成長できるようユニークな仕掛けを30以上も導入しています。

1. 「ラブレター採用」
新卒採用では、普段の自分らしさをそのまま出してもらうため、服装は自由。
会社への「ラブレター」を持参してもらいます。さらに、質問が書かれた紙が入った「ガチャガチャ」を回してもらい、質問を通じて応募者の考え方を深く掘り下げます。
これはスキルよりも、会社と応募者が「お互いに居心地がいいかどうか」というカルチャーフィットを重視する姿勢の表れです。

2. 月間MVPの工夫
毎月実施されるMVP社員表彰は、売上や営業成績といった成果だけでなく、「カフェ&バー利用回数No.1」や「ここぞというときにいいことを言う島田人」といった行動を称賛の対象としています。
賞金はサイコロで決めるなど、エンタメ性を加えて社員が楽しめるように工夫されており、社員のモチベーションを高めています。

3. 自律的な成長を促すキャリアパス
社員は、自分の特性や目指すキャリアに合わせて、「コアワーク(技術力軸)」「デベワーク(開発力軸)」「エンワーク(人間力軸)」という3つの働き方から選択できます。
このタイプはユニフォームにバッヂとして示され、互いの価値観を認め合う材料としてコミュニケーションの円滑化に役立っています。
さらに、業務レベルを10段階に言語化し、具体的な目標を明確にすることで、社員一人ひとりが高い解像度で成長目標を持てるようにサポートしています。

4. 「ワクワク生きる」成長応援制度
業務に直結するスキル習得「イキイキ働く」だけでなく、自分らしさを磨くための趣味や習い事にかかる費用を会社が負担する「ワクワク生きる」制度も設けられています。
社員一人ひとりの持ち味を認め、引き出す「社員を会社に合わせるのではなく、どうすればフィットするか考える」という経営者の哲学に基づいています。

小さな施策が創る大きな変革

島田電機製作所の改革は、代表就任当時から売上が倍以上になるという具体的な成果を生み出しました。
特に、ブランディングが成功し、不毛な価格競争に巻き込まれることがなくなったという事実は、中小企業が人的資本経営を通じて「企業価値」を高められる証明です。
また、共感度の高い人材からの直接応募が増えるなど、採用面でも大きな成果が出ています。

💡3つのヒント

1. 壁を壊す場づくり
社内にカフェ&バーを設けた事例のように、高額な設備投資でなくても、社員同士が仕事の延長でラフな会話を交わせる交流の場をつくり、経営層と現場の間に存在する壁を積極的に取り払っています。

2. ユニークな評価制度の仕組み
採用時に「ラブレター」や「ガチャガチャ」で普段の自分らしさを重視。
評価の際に売上以外の「良い行動」や「趣味・習い事」への挑戦(ワクワク生きる制度)を会社が支援する制度を導入するなど、社員の個性や持ち味を最大限に引き出す経営哲学を制度として示しています。

3. 人間力で成長を促す
技術スキルだけでなく、AIに代替されにくいヒューマンスキル(人間力)を競争力の核と定義し、社長自らが講師を務めて、会社の目指す価値観や時代に必要な人間力の考え方を社員に直接伝えています。

*詳しくはこちらの資料に記載されています。
     ↓
資料:株式会社 島田電機製作所
YouTube:島田電機製作所

~これまでご紹介させていただいた企業さまです~
事例① 新たな事業機会にもつながった御津電子株式会社
事例② 株式会社八天堂の人を大切にする経営哲学
事例③ ユニークな人事評価制度の岩田商事株式会社
事例④ 働き方を変えて優秀な人材を呼び込む株式会社稲美乳販
事例⑤ 理念経営でAIに代替されない人間力を育むグローバルビジネスソリューション株式会社