「くりーむパン」の八天堂 どん底から生まれた人づくりの経営哲学 中小企業の人的資本経営の事例をご紹介②

事例

ブログをご覧いただきありがとうございます。

今回も中小企業の「人的資本経営」の事例を一緒に見ていきたいと思います。
名付けて、うちでもマネできるヒントを探そうシリーズ。(もっと良いネーミング募集中)

今回、私たちがヒントを探るのは、広島県の人的資本経営事例集に掲載されている
株式会社 八天堂さんです。
駅ナカにある、そうあの「冷やして食べるくりーむパン」のお店です。
初めて食べたときのとろけそうな食感に感動された方も多いのではないでしょうか。

画像は、八天堂さんのHPからお借りしました

八天堂は1933年に和菓子屋として創業。
今や全国的に知られる企業ですが、現在の成功に至るまでには、倒産寸前という大きな危機を乗り越えてきました。
そのV字回復の原動力こそ、「人」への考え方を根本から変えた、熱い「理念経営」にありました。

どん底から生まれた「人づくり」の経営哲学

八天堂の三代目社長である森光氏は、若い頃、会社を急拡大させる過程で、「仕事ができる社員」だけを重用する経営をしていました。
結果、理念を共有していた優秀な店長や候補者が次々と辞めてしまい、会社は民事再生法も視野に入れなければならないほどの危機に陥ってしまいます。

この苦しい経験を通じて、社長は「仕事ができる、できないだけで人の価値を決めつけてはいけないと深く反省。
「人づくり」を経営の核に据えることを決意しました。
この「人づくり」の根幹には、社長自身の「人が好き」という想いがあります。

この経験は、「人への投資が企業を持続的に成長させる資本である」
中小企業にとって最も重要な哲学を確立させました。

信条(クレド):八天堂は社員のために お品はお客様のために 利益は未来のために」。
この信条は、社員の幸せを最優先することで、結果的にお客様、そして未来につながる利益を生み出すという、同社の揺るぎない価値観を表しています。

経営理念:「事業の目的は社会貢献にあり 事業の本は人にあり 良い品 良い人 良い会社つくり」。

理念を現場の血肉にする「HATTENDO BOOK」と対話

この理念を全社員に浸透させるための具体的な仕組みがあります。
八天堂では、信条や経営理念を、誰もが理解できるように言語や図でまとめた「HATTENDO BOOK」を作成し、活用しています。

このブックを用いて、毎朝、各部署で朝礼での勉強会を行っています。
この勉強会では、社長自らが理念の内容を解説し、参加者がその日のテーマについて経験や感想を共有する時間を設けています。
これにより、社員一人ひとりが理念に対する理解と共感を深め、自身の行動と会社の価値観を結びつけることができています。

さらに、同社は新卒採用を積極的に行っており、新卒を「理念を一から共有できるまっさらなキャンパス」と捉え、育成・教育だけでなく、良い出会いそのものを「立派な投資」と見なしています。

逆境を乗り越える「挑戦」と「失敗の評価」

八天堂の事例は、社員の成長がそのまま会社の危機を救うことを証明しています。
2020年からのコロナ禍で駅ナカ店舗の売上が激減した際、経営理念が浸透した後に採用された社員スタッフたちが奮闘しました。

彼らは行政の補助金情報を集めながら、確立していたEC事業を拡大し、新しい商品ブランドを立ち上げるなど、自律的に行動し、逆境を乗り越える新たな成長機会を創出しました。

社長は、仕事の場を給料をもらいながら自己成長できる「最高の舞台」だと考えており、中小企業ほどトップの思い一つでこれを実現できると語っています。

そして、「挑戦した失敗を最大限にプラス評価する」人事考課制度の導入を進めています。
失敗を貴重な経験と捉えることで、社員からアイデアが出やすくなり、イノベーションが生まれやすくなる好循環をめざしています。

また、生産性を高め、働きやすさとやりがいの両立を図るため、全社での週休3日制の導入も計画されています。
社員の「働きがい」は、「働きやすさ」だけではなく、仕事のやりがいと合わさって初めて生まれるものだ、というのが八天堂の信念です。

私たちも経営者の人への愛と哲学を基盤に、社員の可能性を信じ、成長を後押しする仕組みを構築していくことで、持続可能な成長を実現していきたいですね。

💡3つのアイデア

理念の血肉化
経営理念や信条を、社内全員が携帯・共有できる形で簡潔に言語化。
毎朝の読み合わせや社長解説を通じて、理念を社員の行動や判断基準にまで落とし込まれています。

失敗を評価する
挑戦の結果としての失敗をコストではなく貴重な経験とみなし、それを最大限にプラス評価する仕組みを導入・検討することで、社員の自発的なイノベーションと成長意欲を最大限に引き出しています。

職場を成長の場に
仕事を「給与をもらいながら自己成長を果たす最高の舞台」と位置づけ、柔軟な働き方やキャリア形成の機会を提供し、社員が会社との出会いを喜べる「人づくり」の環境を整えています。

*詳しくはこちらの資料に記載されています。
広島県の人的資本経営事例集 P7

*HPはこちら→株式会社八天堂さま

~前回ご紹介させていただいた企業さまです~
事例① 新たな事業機会にもつながった御津電子株式会社